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21麻里布〜馬島・佐合島〜佐賀(熊南総合事務組合)
1隻で2航路分


周辺路線図
山口県南部に浮かぶ馬島(うましま)と佐合島(さごうじま)の人口はそれぞれ28人、18人。県民にもあまり馴染みのない小さな島々です。 田布施町の馬島〜麻里布航路と平生町の佐合島〜佐賀航路が統合されて、2006年10月から麻里布〜馬島〜佐合島〜佐賀という変則的な航路となりました。1隻で2航路分の役割を果たします。両町は同じ熊毛郡に属していて、運航は熊南(ゆうなん)総合事務組合が担当しています。 この航路の「ましま丸」は、総トン数14.0トン、航海速力12ノット(時速約22km)、旅客定員48人、アルミ軽合金製です。定員は両島の人口の合計を勘案したものでしょうか。
今回は柳井駅からバスに乗り馬島渡船場前で下車、あまり乗り継ぎ時間がなく漁師町尾津の細い路地を駆け抜けます。麻里布渡船場に停泊中のましま丸は予想以上に小さな船でした。船員と先客が2人ずつ合計4人の姿があったのですが、みんなで談笑しているのではじめは区別がつきませんでした。曇天にもかかわらず瀬戸内の海は穏やかで透き通り魚の泳ぐ姿がはっきり見え、出発直前まで桟橋で釣り糸を垂らしています。最近は毒ハギが釣れるので要注意とのこと。海水浴の時期だけは混雑するそうですが、それ以外は実にのんびりした航路なのです。

渡船場まで尾津の細い路地をゆく

麻里府の渡船待合所

ましま丸

麻里⇔府馬島⇔佐合島⇔佐賀の看板

ましま丸の船内

出航
船内と違ってデッキには椅子がありませんが、手すりにつかまって360度に渡って広がる島々と半島の景色を楽しめます。内海なのであまり揺れず、船酔いの心配はほとんどありません。馬島がはっきり見えてきました。平野部が少ないので海外沿いにぎっしり家が並んでいます。出航からわずか8分で島の集会所とポストがある桟橋に到着しました。先の2人の客が下船します。この航路には車輌を搭載するフェリーがないのですが、桟橋近くにはもっぱら運搬用と思われる軽トラックが数台置かれていました。馬島にはきれいで穏やかな海岸、そしてキャンプ場があり、夏は観光客で賑わいます。近年若い夫婦が移住して島の活性化に大いに貢献しているとの話ですから、将来が楽しみです。

馬島到着

馬島から佐合島へ

佐合島到着
続いて佐合島に向かいます。航路の統合によって新たに航行することになった海域で、これにより船上から見られるようになった光景があります。まず馬島と佐合島の間に浮かぶ無人島の刎島(はねしま)で、干潮時には馬島と陸続きになるそうです。 次に佐合島北端の浜辺に並ぶ100基を上回る墓地です。現在は佐合島の人口はわずか18人とのことですが、100年前は約1000人も住んでいたという過去を現代に伝えてくれています。馬島から11分で佐合島に到着、4分の停泊時間があるので途中下船させてもらい周辺を散策しました。乗降客はなし、島にも人の姿がまったくないこともあり馬島よりもさらに寂しく感じます。家々の壁は西日本の海岸部で一般的な焼杉外壁が多く、この落ち着いた黒さと透き通った海の対照は瀬戸内航路の魅力です。この島は久保白船(はくせん)という自由律の俳人を世に送ったそうですが、その代表作に「海の青さ山の青さに雲重なれり」とあります。

佐合島の集落
いよいよ最終区間、佐合島から8分の平生町佐賀港に向かいます。前方の平生の山の上には白い大きな病院が見えます。以前この病院でごく近しい人を見舞ったとき、病室の窓から見下ろした青い海と島々が印象的でした。いつでも乗れると思っていてもいつの間にか廃止されている、それが地方の公共交通。結局馬島から佐賀港までは貸切状態でした。
この航路は2区間まで160円と格安です。麻里布から佐賀まで全3区間通して乗る酔狂な客はまずいないでしょうが、しっかり320円お支払いします。佐賀港周辺はコンテナを改造した簡素な待合室に、木造の古めかしい家々。大きな地震、津波、台風などの災害が少ないこの地方には日本が本当に豊かだった頃の情景が残っています。

佐賀港に到着

佐賀港の待合室はコンテナ

佐賀の集落


麻里布10:20−【熊南総合事務組合 320円】→10:53佐賀
  2017年9月の情報