静かな里の秋
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今回は兵庫県の姫路から夢前川を上流に向かうバスで、ごく一般的な日本の里の秋を味わえる路線です。
特に際立った特徴はなく、約1時間の短い路線ですのでさっとご紹介しましょう。
午後3時、姫路駅前のバスターミナルから山之内行きバスが発車しました。姫路城(当時改築中)を右手に見て、姫路の街を抜ければ、
やがて紅く染まりつつある郊外の山並みが車窓に浮かびます。右手の薬師山公園を眺めていると、やがて左手には書写山ロープウェイも
見えてきました。
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左右の山がバスに迫り、少し窮屈そうに夢前川が流れています。旧夢前町の中心部に入るとほとんどの客が下車、
中心の前之庄バス停には神姫バスの車庫があり、帰りの姫路行きのバスを待つ登山客らしき姿がありました。
最終的に乗客は3人になり、終点山之内に滑り込みました。ご婦人がバス停のベンチで多くの荷物を整えて気合を入れなおすと
上流側の集落の中に消えてゆきました。運転手は折り返しの便までの休憩で、のんびりとたばこをふかしています。
夕日に染まった山之内の里に、たばこの煙と対岸のたき火の煙が白く立ち上ります。のどかな終点の風景です。
2010年まではこれより先の雪彦山(せっぴこさん)バス停まで路線がありましたが、利用の低迷で廃止されてしまいました。
残念ながら日本各地でこういったバスが次々に短縮され、登山家のバス離れを加速させています。
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姫路駅15:00−【神姫バス970円】→15:57山之内
2012年11月の情報
33 | 寒河江〜谷地〜さくらんぼ東根駅(山交バスなど) |
りんごの森をぬけて
10月になりました。東北各地の路線バスから見える果樹園が彩られる頃です。以前の乗車記ですが、現在もほぼ
同じ環境で運行されているようなので、山形県内の路線バスをごく簡単にご紹介しましょう。
JR左沢線寒河江駅前のバスターミナルから河北町中心の谷地まで山交バスの路線がありますが、本数は多くありません。
(実際はバスの便が悪く、途中の石川で下車して河北町中心の谷地バス停まで5kmあまりを歩きました。)
寒河江の中心部を抜け石川バス停を過ぎると、寒河江川を渡る橋から左手前方に紅葉に染まった月山を含む
出羽の山並みをのぞむことができます。
さらに1km進むと河北町に入ります。この付近は道沿いに様々な果実が実っていて、
りんごをはじめとする赤、柑橘系の黄のコントラストが見事です。歩道にはみ出すほどに実が鈴なりになっています。
この河北町は紅花の産地ですから、その季節にはまた違った色彩を放つのでしょうか。
河北町役場に近い谷地バス停に到着しました。ここにはいくつかのバス停が並んでいて、東根市民バス、村山市営バスなど奥羽本線の
各駅とを結ぶ数種類のバスに乗り換えが可能ですが、どれも本数が少なく注意が必要です。今回は日曜にも運行する河北町のバス(東根線)で
さくらんぼ東根駅まで移動することにしました。やってきたのはかなり小さな車、ほぼ満席になりました。最上川を渡ると、なぜか家も
ほとんどないりんご畑の中を巡回します。まるでりんごの森の中に迷い込んだような車窓でしたが、残念ながら車内混雑のため撮影は
断念しました。
-11:06寒河江駅〜(徒歩1km)〜寒河江市役所前11:38−【山交バス170円】→11:41石川〜(徒歩5km)〜 河北町役場13:00
−【河北町バス200円】→13:32さくらんぼ東根駅
2008年10月の情報
四国の水がめをゆく
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高知県北部は鉄道も集落もほとんどなく、ただ山々と渓谷の緑が続く「秘境」です。
そんな場所をのんびり通り抜けられる唯一の交通手段が今回ご紹介する路線バスの乗り継ぎです。
出発地の土讃線伊野駅のロータリーに、県交北部交通の小さなバスがやってきました。先客は誰もいませんでしたが、
国道にある次の伊野駅前バス停から4人ほど乗車、多くの仲間を得て一安心です。
バスは左手に仁淀川を見ながら上流へと向かいます。今年の高知は雨も少なく猛暑です。
カヌー、釣竿、水遊び。広々とした川面に見える点々が実に楽しそうに浮かんでいます。
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伊野駅から20分あまりの柳ノ瀬で運転手が交代すると、急に速度も増し体は左右に振られます。
途中の出来地で越知方面の黒岩観光バスに乗り換え仁淀川沿いに進路をとることもできますが、このバスは仁淀川の本流をはなれ、
山深い道を登ります。小川川と上八川川という変わった名の川が合流する高岩付近でむささび温泉を経由する以外は、
ほぼ全区間国道194号線を通っています。旧吾北町の中心である思地(おもいぢ)で最後の客が乗ってきました。この路線、乗客は
少ないのに入れ替わりながらも常に3人以上の客がいるから不思議です。スベット、ツバヤブという高知県らしいカタカナのバス停を
通過しながら、高度をどんどん増します。カーブも多いのでバス酔いしてきました。長さ1184mの新大森トンネルの直線で体調を取り
戻します。このトンネルが分水嶺で、嶺北地域に入ります。これまでの水は仁淀川となって土佐湾へ、ここからの水は吉野川となって
紀伊水道に注ぎます。バスは終点の長沢に滑り込みました。
長沢は合併前の本川村の役場のあった場所で、吉野川の最上流部に位置します。
県交北部交通のバス停には小さな待合場所がありますが、嶺北観光のバス停は10mほど離れた電柱にありました。
両社の連携が悪いのでしょうか。乗継時間は20分、炎天下で待ちます。
バス停の前が工事中のため、2台の嶺北観光のバスは少し離れた場所にやってきて停まりました。
地元の学生2人はそれを知っていたのか、どおりで近くの商店の日よけの下で待っていたわけです。
私を含め3人の客を乗せて大川局行きの小型バスは発車しました。同時に週3日しか運転しない寺川行きのバスもさらに吉野川の上流部に
向けて出発するようです。
音声案内も次のバス停の表示も全くない車内ですが、戸中地区と日の浦地区でそれぞれ停車し、2人は日常のように下車して
ゆきました。日の浦の集落付近の道以外はダム建設のため道幅が広くゆったりしています。
他に客のいない車内はますます静かになりますが、冷房の良く効いた小型車から見る真夏の景色は、逆にとても
にぎやかに感じます。
日の浦を出ると、まもなく大川村に入ります。人口は400人にも満たず、離島を除けば日本で一番人口の少ない村。記念に境界で
写真をとらせてもらいました。
右手に細い吉野川を見て、人家のほとんどない道を進むと、バスはようやく大川局前に到着です。続いて田井まで行く
旨を伝えると、運賃を長沢から田井まで通しで計算してくれました。1時間の乗り継ぎ時間で周辺を散策し食事をとります。
早明浦ダムの建設で元の村の中心部はダムの底に、役場を含め集落は高い場所に移転したものの人口の流出に歯止めがかかりません。
数軒しかない店の一つでアイスクリームを買い湖畔で食べました。1軒しかない食堂でざるそばを食べると、この間に黒丸を往復して
きた先ほどのバスが田井行きとなってやってきました。やはり客は私だけ。今年は渇水気味でしたが、ダムの下流部は水を満々とため
その向こうに大座礼山などの高峰を見渡せます。大川村と土佐町の農協の方々が、何かしらの手続きで一時的に車内に入り運転手と
やりとりをする場面がありましたが、結局終点田井まで乗降客は一人もありませんでした。路線維持が少し心配です。
さあ、最後の走者は高知県交通15:55発高知行きのバスです。なんとこれがこの日の最終便で、そのため同社の運転手らしき二人が
最後列に便乗しています。乗客もかなり多い。出発して約2kmは吉野川の北岸または南岸を経由しますが、
この便は北岸経由のため、途中早明浦ダム直下から巨大な堤を見上げます。前回春に訪問した時はこの付近は桜が見事でした。
本山町の中心部では川の対岸にシャクナゲで有名な帰全山公園を臨みます。さらに進んで松村バス停を過ぎると、突然左手に
立派な田んぼアートが姿を見せます。吉野川を囲む緑ともいよいよお別れです。高知道の高架をくぐり新高須トンネルを
抜ければ、大豊町の中心部、穴内川の橋を渡って土讃線の大杉駅に立ち寄ります。本来なら大杉駅で鉄道に乗り換えて
話は終わりますが、もう少し足を伸ばして話を深めます。
今から60年以上前の1947年9月、今回と同様に本山町から大杉駅へ向かっていた路線バスがまさにこの駅に着く寸前に
前方のトラックを避けようとして崖から川に落ちるところを奇跡的にバンパーが木にひっかかりました。
残念ながらバスの車掌さんが亡くなりました。そしてもう一人最後部に乗車していた少女が瀕死の重傷を
負いましたが、町の名医によって奇跡的に一命をとりとめました。その人物の名は「美空ひばり」、当時9歳。地方巡業中の事故で、
これがその後の人生に大きな影響を与えることになったのです。
大杉駅を経由したバスはまもなく「大杉登り口」というバス停を通過します。バス停のそばの階段を登れば樹齢3000年の日本屈指の
巨木が目に入ります。その後大豊トンネルを抜け再び穴内川に沿って走ればまもなく頭上に鉄橋が見えます。
その足元にあるのが枯谷バス停。バス停も錆びて枯れかかっていますがここで下車。目の前の階段を登って鉄橋を渡れば、
そこが鉄橋にある駅として有名な土佐北川駅です。(駅の南側には北川口バス停があり、こちらも利用可)
鉄道ならすぐのところを、6時間、4000円もかけて乗り継ぐバスの旅。かかった時間やお金を上回る何かを得られたのではないか、
とひぐらしの声響く何もない鉄橋のホームで自問自答するのでした。
伊野駅10:49−【県交北部交通 1680円】→11:58長沢12:20−【嶺北観光(※1)】→13:07大川局前14:20
−【嶺北観光(※1)】→14:55田井15:55−【高知県交通 1060円】→16:32枯谷・・・土佐北川駅
2013年8月の情報
※1 各1000円、660円だが、申告により通し運賃で1470円
バスはのんびり島時間
宮古島と石垣島のほぼ中間に浮かぶ多良間島。宮古島から飛行機2便か船1便が運航していますが、特に船は欠航が多く、
訪れるのに苦労する島です。そしてこの島には、飛行機や船に接続するように小さなバスが運行されており、
島の北にある集落と、西の空港、東の港を結んでいました。(※2013年6月現在では、船は基本的に集落に近い前泊港発着に変更に
なったので、港までの所要時間は大幅に短縮されました。港は徒歩でも移動可能です。)
小さな多良間空港に降り立つと、目の前に赤と白に塗られた小さなバスが待機していました。
車体には「多良間村有償運行」と書かれいます。多良間村営バスと書きましたが、多良間村が地元の観光業者の方に委託しているのが
実態のようです。そのため運転手にたずねれば、レンタサイクルなど観光の相談にも乗ってくれます。
バスには一応の時刻表はありますが、接続便としての使命をになっているため、臨機応変に変更されるようです。
この日も飛行機が早く着いたので、バスは10分近く早く出発しました。
観光シーズンではないためか観光客は見当たらないものの、車内はスーツを着た団体客でほぼ満員です。
空港前には直立不動の色白の警察官がいます。微動だにしません。それもそのはず、交通安全のために設置された人形です。
その名も「宮古まもる」君。宮古諸島にはこのような警察官がいくつか設置されていて、島の内外で人気を集めています。
まもる君に見送られてバスは島の北部にある集落へと向かいます。
しばらくすると中央分離帯に大きな木が数本、道路はそれを囲うように迂回します。きっと空港道路を作るときにこれらの木を
残したのでしょう。集落付近にはこの平坦な島には似つかわしくない森や多くの巨木があります。集落と畑との境界には長い防護林も
あります。暴風から身を守ってくれる木々を大切にする島の人々の心遣いが伝わってきます。マニラヤシの赤い実が目につきました。
多良間の街路樹にはバナナやココヤシもあるようです。沿道には家は一軒も見当たりませんが、牧場が多いのでつぶらな瞳の牛と目が
あいます。車もほとんどみかけませんが、時折草を満載した低速の二輪車とすれ違います。
まもなく例の防護林が見えたかと思うと、突如多良間で唯一の集落が姿を現します。小さな路地を通り、バスは多良間村役場前に到着。
全員がここで下車しました。バスは本来ならさらにここから港に向かうのですが、この日は欠航のため運転打ち切りです。
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ネット上にあるいくつかの時刻表のバス停名は、役場前でなく、「農協前」や「集落」となっています。
しかし実際にそういったバス停はなく、「中心地」といったゆるーい感覚なのです。ただ村役場と道路1本はさんで、
農協が経営する店「Aコープ」と農協の倉庫があるので、この辺りにいれば間違いないでしょう。
運行時間もかなりいい加減 臨機応変な島時間です。
帰路が心配な方は利用の旨をあらかじめ電話しておくとよいかもしれません。
※詳細を調査するため、往路は村営バス、帰路は徒歩にて取材しました。
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多良間空港10:40−【多良間村営バス 400円】→10:50農協前 2011年12月の情報
雲仙とフルーツバスケット
長崎県の諫早駅前バスターミナル、ここから有明海沿いに佐賀県境に向かうバスがあります。
行き先表示はその名も「県界」。地方の日曜午前の便ですが意外にも車内は多くの客がいます。
それもそのはず、並行する鉄道の普通列車はこの時間帯は4時間以上もなく、バスが地域に欠かせない足になっているのです。
諫早市街を抜けると、やがて右手遠方に有明海と雲仙が見えてきます。残念ながらこの日は雲仙には少し雲がかかっていました。
湯江付近では諫早湾の巨大な堤防が目に入ります。堤防上が道になっていて、島原方面への短縮ルートになっています。
一方で沿道には堤防の開門の賛否に関する多くの看板も目立ちます。地域の住民にとっては諫早湾の干拓事業は根深い問題になって
いるようです。
一段と海がせまり対岸の雲仙を堪能していると、まもなく車窓にはさらなるお楽しみが。
なんと、りんご、いちご、みかん、メロン、すいかといった、果物の形をしたバスの待合所が次々にあらわれるのです。
形や色はさまざまですが、いちごのつぶつぶもメロンの網目も実によく出来ています。さて、みなさんにもおすそわけ。
目で味わっていただきましょう。
ここ諫早市の旧小長井町が果物の名産地であることからこのようなバス停が作られたようです。(具体的には、殿崎バス停から、
阿弥陀崎バス停までの区間に点在しています。)阿弥陀崎を過ぎれば、次が終点県界です。目の前の川が佐賀と長崎の県境で、
50mほどの小さな橋を渡れば、佐賀県側にも同名のバス停があります。ここから祐徳バスに乗り換え、鹿島へ向かうこともできます。
県境でのバス会社の分断は他にも、香川・徳島などいくつか見られます。こうすることで、互いのバス会社は他県への各種届出を
省略できる大きな利点がありますが、一般の乗客にとっては少し不便かもしれません。でも旅行者にとっては、こういう
光景がなぜか旅情をかき立ててくれるものなのです。
諫早駅前10:10−【長崎県営バス 710円】→10:55県界 2013年4月の情報
大山を縫う
山陰本線大山口駅はまさに大山の玄関口。今は無人駅になっているようですが、駅前からまっすぐ伸びる大通りが
往時の賑わいを髣髴とさせます。始発の駅で5人ほど、途中でも数人の客を乗せて大山に向け快走するバス、意外に日ごろから
一定の利用客がいるようです。雪雲に覆われ、朝日で逆光になる悪条件の下ですが、前方には時折雄大な大山の姿を拝めます。
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県道をそれ佐摩の集落の細道を進みます。この周辺で多くの客が下車します。以前は佐摩で草谷方面に乗換えができたのですが、
2012年3月末に廃止になってしまいました。その沿線の人々もここ佐摩で下車するのでしょう。
身軽になったバスは山ろくの林を駆け上り、駅から30分ほどで終点大山寺バス停に到着です。ここは山頂から直線で3kmと近く、
寺の玄関であるとともに、登山口にもなっています。バス停は立派な駐車場にあります。この日の積雪は約70cm、バスを降りれば
凍りついた地面で足元がつるつる滑ります。せっかくなので、大山寺を参拝します。夏なら片道15分程度らしいのですが、
悪路のため難儀します。参道沿いの家々には立派なつららが垂れ下がり、住人がそれを棒で落としています。素晴らしい銀世界が
広がっていますが、堪能している余裕はありません。最後の階段を上がり、ようやく寺に到着。参拝もそこそこに今度はスキー状態で
滑りながら階段を駆け下ります。なんとか帰りのバスに間に合いました。
晴れ間も出て、天空のバス停付近からは大山が鮮やかに見えます。望遠レンズを通すと、逆光で見えにくいものの、山頂付近に
登山客の姿も見えます。帰りは別路線のバスで米子へ向かいます。やはり林を抜けると前方眼下には米子の町並みが広がります。
極寒の世界から暖かい車内に移ったことで、視界が開けるのと反比例してまぶたが閉じ、やがて心地よい眠りにつきました。
朝方の雪の大山寺も清々しく気持ちの良いものですが、大山の逆光を避け、米子の夕景を期待するのなら、この乗り継ぎは午後が
良いかもしれません。
大山口駅9:20−【日本交通(※)】→9:50大山寺10:30−【日本交通(※)】→11:18高島屋前 2013年1月の情報
※鳥取藩のりあいばす乗放題手形(1800円)利用
天神川の静寂
山陰の雪景色のバス路線を連載します。
まず三朝温泉で有名な三朝(みささ)より岡山県境に近い下畑(しもはた)へ向かうバス路線をご紹介しましょう。
三朝町役場に近い三朝西小学校前から乗り込みます。倉吉方面からやってきたバスには先客はいませんでしたが、
同じバス停から生徒がもう一人乗車し客は二人になりました。
バスは三朝の中心部を抜けると橋を渡って、天神川左岸の国道179号線を上流へ進みます。
一面銀世界の車窓も寒々しく、車内の寂しさをいっそう際立たせます。しかしこのあたりは春になると、川沿いの桜
並木が美しく、天神川桜づつみと呼ばれているようです。赤松、大柿と過ぎ、対岸に比較的大きな集落の見える恩地(おんち)で
生徒は降りてゆきました。歩道は雪深いので、車道との境界の縁石の上を、平均台のように両手でバランスをとって歩いていました。
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橋を渡って穴鴨集落の細道を抜けると、わずかに小高い丘の上にあるのが穴鴨公民館です。公民館の広場がバスの回転場と
なっています。バス路線はここで、木地山、下畑、上西谷方面に分かれます。また木地山より先、ウランで有名な人形峠を越えて
大阪方面へ向かう高速バスも停車する、主要なバス停ともなっています。さて、ここより先はデマンド区間、続けて乗車する客がいる場合か、
予約があった場合にしか運行しません。ただ乗ってみたいというだけで終点まで雪道を往復してもらうのは気が引けますが、運転手の
方に事情を話すと、こころよくバスを発進させてくれました。
誰も乗らない、誰も降りないのはわかっていますが、時刻表どおり、まず上西谷までを往復します。上西谷バス停を
少し過ぎ、チェーン脱着場のような少し開けた場所で折り返します。続いて目的の下畑へ。こちらは坂道、
エンジン音がかすかにうなります。山と川以外に何もなかった車窓でしたが、急に数軒の家が目に飛び込んできます。
下畑集落です。下畑バス停は待合室と郵便ポストが併設された立派な終点で、私はここで下車しました。
行き違いも難しい細い道ですから、バスはだいぶ先まで行って折り返すようです。
ここは天神川の最上流部で岡山県境も近い山の中、鳥取県中部では最も南に位置するのが下畑バス停です。
バスが去るとあたりは物音一つしませんし、人の姿もまったくありません。なぜこんなところに集落があるのか不思議なほどの
立地ですが、雪国らしいしっかりした屋根の家々のほかに、立派な蔵もいくつか目立ちます。この集落があるためにこの貴重な
バス路線が存続しているのです。
帰路も途中の乗降がないのはわかっていますが、同じ順路で穴鴨へ、さらに三朝まで戻ります。完全な貸切状態でした。
この下畑への路線、1日に2往復しかありません。こんな状態では廃止されないかと心配になりましたが、運転手さんのお話に
よると、朝夕の便には多少利用があるようです。私のような物見遊山の客に、倉吉、三朝のバス事情を詳しく教えてくださいました。
鳥取県のバスの乗務員の皆さんはとても親切で、どの路線でも快適なバス旅を楽しむことができました。
三朝西小学校前13:56−【日ノ丸バス(※)】→14:26下畑14:26−【日ノ丸バス(※)】→14:58三朝西小学校前
2013年1月の情報
※鳥取藩のりあいばす乗放題手形(1800円)利用
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