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7武生〜稲荷〜朝谷(福井鉄道バス・京福バス)
白銀は招くよ

1月の朝の武生(たけふ)駅、気温は氷点下3度。目指すは山間部にある池田町の中心、稲荷(いなり)です。
武生駅とを結ぶバス路線は循環線になっています。今回は本数の多い南側の魚見経由の便に乗ります。(多いと言っても休日は南回りが 2本、北回りは1本なのですが・・・)当然のごとく客は一人。
武生駅前 車窓の町はすっかり雪化粧 立山のような雪の切り通しが続く
バスは駅西の武生市街を経由するとまもなく踏切を渡り進路を東にとります。時折、路肩の雪ですれ違いの困難な小さな道に 入り、各家で雪下ろしの光景を間近に見ます。 檜尾谷からは比較的整備された県道201号線を直進し、車窓には冬の青い空に白銀が輝いています。 越前市最後の集落入谷を出ると、道は険しい峠越えをします。沿道の温度表示は氷点下8度。 右手はるか下方には走ってきた武生の町が見えますが、やがて峠を越え下り始め池田町に入ります。 左右の車窓には小さな車はすっぽり埋まってしまうような雪の切り通し。客はここまで一人でしたが、魚見、荒谷といった 池田町の集落でようやく二人の客を乗せ、バスは10分遅れて、稲荷に到着しました。
どこまでも白い世界 稲荷に到着 稲荷バス停付近
20分の乗継時間で、次は休日は2便しかない福井駅行きの京福バスに乗る予定です。10分遅れたため、10分だけ付近を散策しますが、 幸いにも池田町の見所はこの付近に凝縮されています。
まずは稲荷バス停の目の前にある国指定文化財の須波阿須疑(すはあすぎ)神社、バス停名の由来です。 この神社では小豆島の神様である大野手比売(おほのてひめ)が祀られています。池田町は、瀬戸内海の小豆島の旧池田町の人々が 移住して開拓された町なのです。
中心通りを北に向かうと、池田郵便局を過ぎて役場近くの交差点に出ます。左折すると大きな町役場が見えますが、右折すると これも国指定の文化財である堀口家住宅があります。江戸時代初期建設の茅葺き屋根です。 この日の積雪は1mを超え、内部の様子を深く見ることはできませんでした。
堀口家住宅 役場入口から 福井駅行きバスに
散策を終え、近くの役場入口のバス停から福井駅行きのバスに乗り込みました。やはり他に客はなし。
こちらは行きと違って激しい峠越えはありません。バスは雪色の小さな川に沿って下ります。 これが福井市に流れ込む大河となる足羽(あすわ)川です。やがてこの路線は越美北線の美山駅近くから鉄道と並走します。 美山駅最寄の朝谷バス停で下車し、徒歩10分ほどの駅から鉄道に乗り換えたのでした。

青空に輝く白銀の車窓劇は、今冬も各地のバスで繰り広げられます。
朝谷バス停に到着 バス停の屋根 越美北線美山駅

武生駅7:41−【福井鉄道バス1020円】→8:35稲荷・・・(徒歩600m)・・・役場入口8:55−【京福バス760円】→9:20 朝谷・・・(徒歩800m)・・・美山駅  2010年1月の情報


6豊田(四郷)〜足助〜根羽(豊田市営バス)
自治体バスで行く秋の三州街道

豊田市から飯田市へと山間部を貫く国道153号線に沿って、バス(一部徒歩)で長野県まで行きます。途中の足助 より先は、三州街道と呼ばれる歴史深い路です。愛知環状鉄道の四郷(しごう)駅、11月も終わりの早朝とあって、 風は冷たく気温も5℃を下回っています。足助方面始発バスが朝日を浴びて出発です。
この路線の西中金まで、以前は鉄道がありました。元踏切の場所で見えるレールの切断跡に痛々しさを感じます。 その廃線部分を補完するためか枝下や広瀬などを迂回経由した後に力石より国道に沿って走ります。 足助高校の学生で満員になった小型バスは約40分で足助の役場がある香嵐渓(こうらんけい)バス停に到着です。 ここ香嵐渓は紅葉で有名な場所で、早朝の曇天という悪条件ながら川沿いにモミジを楽しむことができました。
地図
愛知環状鉄道四郷駅 旧足助町役場前にある香嵐渓バス停 すぐ近くの橋からのぞむ紅葉
香嵐渓の中心、待月橋付近 時間をおうごとに観光客も増えてきました もみじのトンネル
寒い香嵐渓を2時間ほど散策、再び稲武(いなぶ)へ向けてバスに乗ります。 伊勢神峠のトンネルを抜け郡界橋で、旧稲武町に入ります。残念ながらこの区間は山に囲まれ集落も少なく、 あまり見所はありません。目的地の稲武まで40分あまり、乗客はひとりでした。

稲武では10分の乗り継ぎで、愛知県側最後の集落である上郷(かみごう)へ。 時間帯によっては長野県の根羽までの直行便もあるのですが、本数はかなり少なく不便です。
バスはどんぐりの湯など稲武の町を一周してから再び車庫に戻り上郷に向かいます。やはり乗客はひとり。 運転手の方が沿線を案内してくれました。あたりの紅葉はピークを過ぎたそうです。冬は20cmの 雪が積もるという野入、柏洞の集落を過ぎ、しだれ桜で有名な大安寺を川の向こうに見れば間もなく上郷に到着です。
古めかしい車庫で発車を待つ稲武バス 彩り豊かな上郷集落
バスの便が悪いので、ここ上郷から5kmあまり歩いて、県境を越え長野県根羽村を目指します。 天気は晴れ、風は冷たいものの矢作川沿いのすがすがしい空気は快適です。歩道もよく整備された国道を進むと、 「国界橋」という小さな橋で長野県に入ります。矢作川はこれより上流は根羽川に名前を変えます。
長野県に入ります
月瀬の大杉 大杉全景 高さ42m 本土で6番目の巨木
県境すぐの名所が「月瀬の大杉」、長野県で一番の大きな樹です。 国道の大杉への入口には看板もあります。なお付近は熊出没歴あり注意が必要です。
月瀬バス停がある橋が大杉への入口

上郷から1時間ほどで根羽村役場前に到着。 役場前には見事な玄武岩があります。村役場の資料によればなんとこの根羽一帯は以前火山で、役場の近くに 中心火口があったらしいから驚きです。
地理的には矢作川の最も上流にあたり、三河地区との結びつきが強いようです。ここまで通った国道153号線の 基礎となった三州街道は武田信玄によって開発され、その信玄はこの村でなくなったとして信玄塚があります。

この後平谷から三州街道を外れて飯田に出たため、バス旅の紹介はここで終わりますが、根羽より飯田への三州街道の旅も 運賃わずか200円の西部コミュニティバスと、信南交通を乗り継いで簡単にできます。 秋の深まった三州街道を、古の旅人の姿に思いをはせながらめぐってみてはいかがでしょうか。

四郷駅6:39−【豊田市営バス500円】→7:19香嵐渓9:26−【豊田市営バス600円】→10:10稲武10:20−
【豊田市営バス200円】→10:39上郷・・・(徒歩6km)・・・根羽  2007年11月の情報

5土佐大崎〜織合〜新田(仁淀川・津野町営バス)
高知の清流を走る
(※2011年3月に津野町営バスの一部が廃止され、乗り継ぎができなくなりました。)

高知の山間部で細々と活躍する仁淀川町営バスと津野町営バスをご紹介します。 なお、どちらも鉄道の駅のない町のため、まず仁淀川町へは佐川駅から黒岩観光バスで、津野町へは須崎駅から高知高陵交通で行くなど、 別の便も利用する必要があります。私は前者を選んで仁淀川町役場のある土佐大崎までやってきました。
仁淀川町中心部 仁淀川 土佐大崎駅
仁淀川町はその名のとおり仁淀川沿いにあり、町営バスは役場近くの土佐大崎を拠点にしていて、長距離にもかかわらず運賃は うれしい200円均一です。 織合行きの小型バスには21人分の座席、乗客は3人。名野川を過ぎ左折して橋を渡れば旧仁淀村の中心の森バス停です。 夏らしくバス停標識にひまわりが飾られていました。
その先の長者で大崎から一緒だった2人が降りると同時に、子供が2人乗り込みました。刑部バス停で子供たちはバスを降り 、運転手に「ありがとうございました」と言うと、既に川で泳いでいた友達の方へ走って行きました。
小型バスの車内 森バス停 川にかけだす子供
織合橋 2つの町の同じ車両が並ぶ
私一人だけになったバスは清流の小道を走りぬけ、終点織合橋に到着です。ここで津野町営バスに乗り換えます。 同時に津野町からのバスもやってきて、逆に仁淀川町営バスに乗り換える人の姿も。両町のバスは同じ色、形で、 協力して購入したのではないかと察しました。

私一人を乗せた津野町営バス、驚くほど寂しく薄暗い道。長い矢筈トンネルを抜けてついに津野町に入りました。 このあたりは四万十川の源流域です。バスは清流に沿って走りますが、たまに見える家は廃屋ばかり、 お盆にだけ麓から戻ってくる人もいるようですが、これでは途中の乗降はありません。
まもなく津野町最大の名所である四国カルストの天狗高原との分岐を通過します。なお、この津野町営バスには 四国カルストへ行く便もありますので、どうぞご利用ください。
昼なお暗き杉の並木 町境のトンネルを抜ける 四万十川水系に沿って
バスは津野町役場のある新田まで行きますが、沿線の名所を見るため、途中の古味口で下車しました。 とんぼの飛び交う谷あいの田園の坂を汗だくになって2kmほど歩くと、左手に美しい滝が姿をみせてくれます。 長沢の滝です。

さきほどのバス通りに戻って新田までは約6km。 途中史跡の説明看板があり、吉村虎太郎の誕生地とあります。坂本龍馬と並んで土佐の四天王と呼ばれた暴れん坊です。 さらに坂を下ると、川に一本橋が見えます。「四万十川芳生野早瀬の一本橋」とあります。この付近は水かさが増すと橋が水面に沈む 「沈下橋」が有名ですが、このような簡素な橋をよく見かけます。
この時期の山の天気はきまぐれ、すっかり雷雨に巻き込まれてしまいました。滝以外は車窓からも眺められるので、夏は 終点新田までの乗車をおすすめします。
古味口バス停付近 長沢の滝 四万十川一本橋

土佐大崎12:43−【仁淀川町営バス200円】→13:15織合橋13:20−【津野町営バス560円】→13:50ごろ※古味口
2007年8月の情報

4南熊本駅前〜砥用〜矢部(浜町)(熊本バス)
石橋をたたえて渡る

九州には数々の石橋が残っています。その中でも特筆すべき霊台橋と通潤橋。この橋がある2つの町を結ぶのが 今回ご紹介する熊本バスの路線です。
バスの起点は熊本の交通センターですが、鉄道利用者は南熊本駅前からが便利。
南熊本駅 バス出発 緑川に沿って
途中、中の瀬のバス車庫や嘉島の熊本クレアを経由すると住宅地を抜けます。やがて緑川の清らかな流れを右手に 見ながら上流の御船町、甲佐町を通過すると、二俣橋バス停からいよいよ石橋の宝庫である国道218号線に入ります。

まずはバス停の名にある二俣橋。約30mの石橋が連続して架かっています。次のバス停は小莚。小莚橋は47m。 さらに進むと馬門橋バス停、馬門橋は27m、1828年架橋とのこと。これら多くの橋は江戸時代後期に架けられたものです。
しばらくするとバスは国道をそれ、並行する旧道の集落に入ります。目磨(めとぎ)、大窪とバス停を通過しますが、 それぞれ目磨橋、大窪橋という石橋があります。(一部は近年の水害で流出したという話も。) 以上の石橋はバス停からは近いようですが、車窓からじっくり眺めることはできません。時間のある方はどうぞ途中下車して ご覧ください。
砥用中央、学校前と旧砥用町の中心集落を通過し、再び国道に合流すると、いよいよ最大の見せ場である、全長90m、径間 (アーチの大きさ)28mの「霊台橋」です。 明治より前に作られた石橋としては日本一、その後を含めても第3位の大きさだそうです。 バス停の名にもありますし、左手の車窓からもよく見えます。現在のバスはこの橋と並んで架けられた新しい橋を渡りますが、 1966年までは霊台橋の上を走っていたそうです。
いよいよ砥用 砥用中心部 霊台橋
さて、三本松から再び国道をそれると右手には緑川ダムが見えますが、車窓はしだいに山深くなり、寂しくなります。 内大臣付近のバスの道にびっくり。行き違いの難しい曲がりくねった細い道、いくつものつづらを重ねて標高を増すと、 九州の山々が手に取るように望めます。どこに連れて行かれるのか不安になるほどの真っ暗な森の中を抜けると、やがて 白小野で再び国道に合流、ほっと胸をなでおろすのでした。
出発から2時間、ようやく終点である浜町営業所に到着。ここは旧矢部町の中心、現在の山都町の役場のある場所です。
こんな山深い道や こんな細い道も 浜町営業所に到着
悪路に疲れましたが、ここから徒歩10分の通潤橋を見に行きます。夏季の特定の日には定時に放水が行われ、その勇壮な姿は暑さはもちろん、 全ての疲れを癒してくれます。また橋の上を歩くことができるのですが、手すりのない橋上の心もとなさは、さらに体を冷やして くれることでしょう。まさに石橋の偉大さをたたえて渡るバスの旅です。
通潤橋 橋の上
美里町HPを参考にしました。
南熊本駅前9:39−【熊本バス砥用経由1430円】→11:45頃 浜町  2006年8月の情報

3高校前〜三池(三宅村営バス)
火山との共存

旧阿古小中学校
2000年の噴火による全島避難、2005年に帰島が実現したものの、まだその爪あとが生々しく残る三宅島。 今回はこの厳しい島で活躍する三宅村営バスをご紹介します。

三宅村営バスは島を一周する路線のみ。ただし起点と終点は三池と三宅高校前と別々で、一周より少し多めに走る 路線です。島の南西側から時計回りに一周してみましょう。
錆ヶ浜バス停 バス到着 溶岩地帯も走る
船による島の玄関口は3つ、西側の錆ヶ浜港・伊ヶ谷港、東側の三池港です。三池港が高濃度地区にあるため、現在は 錆ヶ浜港が主な経由地になっています。錆ヶ浜港のある阿古地区は近年の噴火による溶岩や噴石がよく観察できる場所です。白く 立ち枯れた木々も印象的です。
ほぼ円形の島ですから、海側に席をとれば常に大きな海を楽しめます。西海岸では、海の向こうに神津島が見えます。 北部の伊豆、神着(かみつき)付近は本州に近く古くから栄えた地域、旧島庁舎や神社など興味深い名跡が多くあるので、 ぜひ途中下車してみましょう。いずれもバス通り沿いにあるので、散策は容易です。
伊ヶ谷港へ 大久保浜に下りる 東海岸
さて、島の東側にまわると車窓が変わります。火山ガスの高濃度地区に指定されているため、現在も居住ができない地域、 人の姿はほとんどみかけません。将来の生活再開の希望を持って手入れをしている住宅こそきれいですが、再建をあきらめた 多くの建物が、噴火直後の無残な姿をさらしています。
ひょうたん山 三池地区 村役場
そしてこの原則立入禁止の高濃度地区に三宅村営バスの事務所があります。火山ガスにより車体の劣化が激しく、 現在では様々なバスがありますが、基本的には青と白の2色で塗られています。
ひょうたん山 三池地区 村役場
高濃度地区を抜けると時計回りのバスの終点高校前に。この三宅高校、昔の火口の中に建っています。 徒歩圏内には大路池や長太郎池など火山に特有な地形も。南の海岸からは御蔵島がよく見えます。

三宅村営バスでは乗り放題の乗車券を発売しています。2日用が1000円、3日用が1500円。 のんびりゆっくり観光するには最適。一日も早い三宅島の復興を祈るばかりです。
※実際は分割して乗車。(島一周の所要時間1時間15分)2010年6月の情報

2隠岐汽船〜国賀(西ノ島町営バス)
車窓に広がる海と陸の芸術

島に到着
山陰沖に浮かぶ隠岐島前の西ノ島。今回はここを走る西ノ島町営バスをご紹介しましょう。

隠岐汽船が島の玄関港である別府港に到着すると、青い海を背景に映える赤いバスが出迎えてくれます。 島の西部へ向かう国賀行きのバスに乗りました。(この国賀行きの便は夏季限定です。)観光客と地元の人、 10人あまりが席を埋めます。 別府の集落を過ぎるとバスは軽い峠越えをし、山の中の寂しい車窓が続きますが、美田で再び 海をのぞみます。
隠岐汽船バス停 美田の海 美田の海2
しばらく湾の海岸線に沿った道を走行し、左手の車窓には常に目の前に穏やかな海を見ることができます。 やがて急に左にカーブしながら小さな運河にかかる橋を渡ります。これが西ノ島のくびれ部分で島を 東西にわける「船引運河」、島南側の船が島の北部の漁場に出るために1915年に1年をかけて作った 長さ300mの水路です。運河の完成前は、文字通り陸上を船を引いて移動させたていたとのこと。
船引運河 浦郷バス停 イカ寄せの浜
船引運河を過ぎると、今度は湾の反対側からさきほどの美田の集落をのぞみます。湾の入口にかかる 西ノ島バイパスの橋を頭上に見ると、まもなく町役場や警察署がある浦郷(うらごう)の集落に入ります。 ここにある由良比女神社近くには「イカ寄せの浜」があり、以前はこの浜に大量のイカが陸にまで 押し寄せたとか。これを手づかみで拾う様子が今もパネルの人形で再現されています。

浦郷小学校より先は細い山道。この手前でバスのすれ違いのために数分停車です。やがて山の中から 対向するバスがひょっこり出てきました。
バスはしばらく山の中を進みます。隠岐名物の牛の姿も。この島には牛が860頭もいるそうです。
次の瞬間、車窓には突然高い位置からの 水平線が広がり、思わず感嘆の声を出します。ついに終点国賀(くにが)に到着です。
すれ違いで待ち合わせ 隠岐名物の牛 国賀海岸が見えてきた
国賀バス停周辺は国立公園に指定されている景勝地。海のトンネル「通天橋」はすぐ近く。
さらに足を伸ばせば馬がたわむれる草原、そして海蝕崖では日本一の高さ(257m)の摩天崖へと 芸術は続きます。
国賀バス停 バス停近くの景色 国賀海岸の景勝地

隠岐汽船10:09−【西ノ島町営バス200円】→10:39国賀  2008年8月の情報

1稚内〜浜頓別(宗谷バス)
エゾシカと水芭蕉にあえるバス
(※2011年10月に経路が変更されました。)

北海道最北部を走る宗谷バス、南稚内駅近くにある南駅前バス停に、浜頓別高校行きの始発バスがやってきました。まだ6時前、 早起きの便です。下は1985年の時刻表、ここには以前同じ区間を国鉄天北線が走っていて、始発列車の南稚内発は5:25でもっと早起き。 当時は浜頓別まで2時間かかりましたが、現在バスで2時間30分かかります。
以前の路線図 以前の時刻表
バスは海を見ながら宗谷岬へと続く道を走りますが、まもなく右折して内陸に。左手には稚内空港が見えます。 付近に家はほとんどなく、時折湿地に驚くほどの水芭蕉の大群落を目にします。車窓にはわずかに雪が残っていますが、 雪解けの道北は咲き乱れる水芭蕉で再び白く輝いています。 ただ延々と牧場の広がる大地、丘の上を見ると数頭のエゾシカがバスを見下ろしています。バスが急ブレーキを かけました。目の前をシカが飛び出して道を横断していたのです。 昔は駅だった樺岡や曲渕などでは、往時の賑わいを惜しむかのように現在も駅名標が掲げられています。 曲渕付近で一人降り、ついに客は他にいなくなりました。以前の曲渕と小石の駅間は日本一長いことで有名で、 バスはこの間で宗谷丘陵の分水嶺を越え、猿払(さるふつ)村に入ります。
南駅前バス停 水芭蕉の群落 猿払村営バスのバス停
猿払村の役場がある鬼志別(おにしべつ)、駅跡を改良したバスターミナルで数分間の停車です。 このターミナルの中には、以前の天北線の資料が展示されていて、鉄道ファンも楽しめます。 またここで猿払村営バスに乗り換えることができます。
猿払村中心の鬼志別 ターミナルにある駅名標 以前の時刻表
この鬼志別付近で数名の学生を乗せ、車内は再び活気を取り戻します。5kmほど走ると浜鬼志別バス停に到着、 視界にオホーツク海が広がります。バスはここで右折し海を左手に見ながら再び海岸線沿いを走行します。
芦野付近でまた海岸線から離れ、キモマ沼やポロ沼などの間を走り抜けます。これが原野なのかと感じさせられる 自然のままの光景が広がり、村南部の集落浅茅野を通過して行きます。
やがてバスは「飛行場前」というバス停を通りますが、周囲に飛行場はありません。 実は戦争末期わずか1年だけ旧帝国陸軍の浅芽野飛行場があったらしいのです。 村の南部沿岸地域にあたり、現在はただ池沼のある原野なので、いまだにバス停名が「飛行場前」であることには 違和感を感じます。しかし、この飛行場建設による当時の強制労働者の記事もあり、付近では多くの遺骨が 見つかっているそうです。この悲惨な背景を忘れないためにもバス停の名は貴重なのかもしれません。
浜頓別バスターミナル 浜頓別の町並み クッチャロ湖
ほどなく浜頓別(はまとんべつ)町に入り、ベニヤ原生花園を通過、終点浜頓別高校の手前にある浜頓別バスターミナルで 下車しました。浜頓別といえば白鳥の飛来するクッチャロ湖で有名、あいにく雨ですが、バスターミナルからは徒歩約15分、 訪れてみます。驚く数の白鳥と鴨が群れていました。ちょうどシベリアに飛び立つ前だったようです。
南駅前5:57−【宗谷バス2120円】→8:21浜頓別  2008年4月の情報